12~23年「一昔前」の特定の楽曲から創造する音楽家たち: 全四組の楽曲を紹介

懐メロとポピュラーのはざま

普通、『懐メロ』と題される楽曲は4, 50年前に発表されるものが普通だ。 例えば50年前の80年代における『懐メロ』では戦前組の藤山一郎や市丸が活躍していたし、現在の懐メロではその80年代に活躍した中森明菜などが言われている。

そしたら、その『懐メロ』と現在の『ポップソング』の中間にあるものは何というのだろうか。 そもそも、一昔前の、今から10年から20年ほど前の時代を顧みられることはあまりない。

つまりは、骨董品でもない中古品はただの流行に遅れた中古品に過ぎないということなのだ。 最近になって、スマホ以前のガラケーの時代、つまり15~20年前の2000年代初頭が回顧されることが起きはじめてはいるが、(夏目間風などのガールズポップの一部を除けば)その社会の躍動が音楽に結びつくことはあまり見られない。

そこで、私が知る音楽の中で『一昔前』となった少し古い楽曲が新しい音楽を創った事例をここに紹介したい。

【23年】1933「Hong Kongs Blues」と1950年代のエキゾチカ・サウンド

まずはHong Kong Bluesを聴いてほしい。

(西洋人が思う)東洋的な音階をブルースというアフリカのサウンドに当てはめてしまう。当時としてはとても革新的な楽曲だが、これが『一昔前』となる頃、つまり1950年代にはこのような風土を連想させるエキゾチカ・サウンドが勃興する。

一番有名だと思われるのは、YMOのFirecrackerの原曲を書いたマーティン・デニーの音楽だろう。マーティン・デニーが「EXOTICA」を発表したのは1956年のこと。Hong Kong Bluesから23年が経っていた。

【19年】1950年代のエキゾチカ・サウンドと1970年代の細野晴臣

なお、この1950年代のエキゾチカ・サウンドの流行には続きがある。このまた二十年後、つまり1970年代に細野晴臣が50年代のそれの延長線上においたエキゾチカ・サウンドを展開していたのだ。

細野晴臣もエキゾチック第二弾として発表したアルバム「泰安洋行」で、「香港ブルース」をカバーしている。 つまり、Hong Kong Bluesはあしかけ40年ほどの間様々な音楽家の間で話題となり、カバーされ、ブームを築いていたのだ。

【17年】1936 「Ida Red」 と1955「Maybellene」

チャック・ベリーの出世曲「Maybellene」は19年前のカントリーのヒット・ソング「Ida Red」の強い影響を受けている。

Chess was sure the new song could be a hit, but he didn't like the name. It was too rural, and he thought its similarity to "Ida Red" might pose copyright hassles.

The Story Of Chuck Berry's 'Maybellene' : NPR

ビートは両曲ともそのままそっくり同じ。「Maybellene」という曲のタイトルも元々は「Ida Mae」だったというから、彼、チャック・ベリーが「Ida Red」という楽曲から受けた影響の強さが分かるだろう。

【12年】1956「Flight to Hong Kong」 と1968「Back in The USSR」

Back in The USSRのあの有名な離陸音イントロには実は元ネタ、或いは先行する録音がある。

 楽曲にもSEは多用されています。例えばビートルズの「Back in the U.S.S.R.」にはイントロから飛行機の離陸音が入っています。また「Good Morning Good Morning」にはコケコッコーというニワトリの鳴き声。そして「Hey Bulldog」には犬の鳴き声が入っていますが、これは本物の犬ではなくポール・マッカートニーが犬の声を真似ているようです。

番組や動画配信、楽曲にも使われる「SE」(サウンドエフェクト)とは… | ラジトピ ラジオ関西トピックス

それは先述の「Hong Kong Blues」の作曲者Hoagy Carmichaelが1956年にリリースした「Flight to Hong Kong」だ。

原曲は下記のような音楽で、離陸音は途中に挟まれる形だが、上記のHoagyのカバーは最初は銅鑼を叩いた音で始まるとはいえ、そのイントロにしっかりと離陸音が織り込まれていることが確認できる。

ビートルズ・メンバーとHoagy Carmichael

では、これをそもそもThe Beatlesのメンバーは聴いていた (知っていた)のかというと、ネット上にこれを関連付けた記述がそもそも見つからなかった。

しかし、これを否定することはできないほど、The Beatlesの音楽はHoagy Carmichaelの影響を受けているということは確信を持って言えると思う。

まずはPaul McCartneyとの関係から説明する。彼は The Farout Magazine によると、下記のように語ったとされる。

And while Macca spent plenty of time waxing lyrical about their plaudits, his heroes came into a less traditionally cool line-up of Nat King Cole, Hoagy Carmichael, Cole Porter, and Fred Astaire. They may not have been the most stereotypical kids on the block, but the former Beatles’ justification was simple: “I love them”.

The four artists who shaped Paul McCartney's granny music

また、McCaはビートルズ時代に彼の楽曲「Up A Lazy River」を非公開のリリースとして録音している。

Up A Lazy River (song) ※同サイトはHPが運営するMcCaのDB。

次はレノン・マッカートニーのもう一人の片割れJohn Lennonの関係だ。

マイケル・ファインスタインというアメリカの有名歌手の投稿によればJohn LennonもHoagyの音楽が好きだったというのを公言している。

BIRTHDAY LEGEND! John Lennon! Throughout his life, Lennon, always cited, Hoagy Carmichael as his favorite songwriter! It just goes to show that our Great American Songbook has vast influence and will forever be the foundation of modern music!

BIRTHDAY LEGEND! John Lennon!... - Michael Feinstein | Facebook

George Harrisonは先述の「Hong Kong Blues」のカバーを1981年の「Somewhere in England」で公式に発表している。

Hong Kong Blues - YouTube

Ringo Starrもソロ・ファーストの「Sentimental Journey」(1970)で彼の代表曲「Stardust」をカバーした。

Stardust - YouTube

このようにThe Beatlesのメンバー全員はHoagy Carmichaelのカバー或いはファンの公言を行っているから、この録音の離陸音のイントロのアイデアを自らの音楽として流用した可能性は全く否定できないものだと私は考えている。

【18年】1980「Secret Friend」とレイ・ハラカミの音楽 (1998~2011)

レイ・ハラカミ自身が語るところによると、彼の独特な作風はPaul McCartneyの「Secret Friend」から強い影響を受けているという。

ボーナストラックで入ってる『secret friend』という曲は、マジでハラカミは影響受けとります。

是非ッ。一度ッ。お越し下さいッ。 : おレー腹かみの暴論展開座礁予定

Youtube Playlist

本記事で取り上げた楽曲のプレイリストを、下記のリンクに公開している。
よければ読者の方も覗いてみてほしいと思う。

「一昔前」からの革新 - YouTube

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